自分の意識外での力
イラスト表現の追求をやめて、抽象画に惹かれて行ったのには理由があります。
職業としてのイラストは、クライアントの代弁者としての表現を追求するのが仕事です。
それと共に、自己表現としての美的価値観が共有できないとやり甲斐は無くなっていきます。
自分が良いと思った表現が世間からは無視される。
じゃあ、こんな表現はどうだろう?と色々試してみるが、仕事は入って来ない。
デザインやイラストは、時代の需要と共に必要とされる表現は変わって行きます。
自分が全盛期の頃に持った美的価値観は、もうこの時代には必要無くなってしまったのだと思います。
どの道こっちで努力しても必要とされないのなら、いっそ自分が綺麗だと思うものを追求した方が、やり甲斐があると思ったのがキッカケではあります。
何の為に絵を描くのか?
まずは、自分が感動したい。新しい発見をしたい。
そこに行き着くのだと思います。
毎回描く毎に何か新しい刺激や発見が欲しいと思って描いていたんじゃなかったのか?
そんな原点に戻ろうと思いました。
そうなって来ると、自分で意図して描く形やタッチには限界があると思いました。
仕上がりが想像できてしまう。そんな絵には魅力を感じなくなって行った。
描いていくうちにどんどん新たな偶然が偶然を生み、まるで他人が描いた絵を見たような感動。
自分が意図していなかった形や色合いが生まれる。
そんな快感を味わえる技法をどんどん試すようになったのです。
全てが満足いく偶然が生まれるわけではありません。
自分がイメージしたものと違う結果になった場合は、色を削ったりもします。
でもその削った軌跡が面白い結果を産んで、新たな想像を膨らませてくれます。
そんなことを経験していると、人間が自ら考える表現や形には限界があるように思えるのです。
何かしら、自然や目に見えない何かから力を与えられ、描かせてもらっているようにも思えるのです。
もちろんテーマが先にあってのこと。
それをどう表現しようかと、四苦八苦しているうちに神様がヒントをくれるのだと思います。
自分で描いていながら、新しい刺激を与えてもらっている。
これからもそんな時間を大切にしていこうと思います。


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posted by JUNICHI ICHIMURA at 11:08|
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