何故か今も・・・。
小学生の頃、お盆の時期には祖父に連れられて、高松町の親戚が経営している、ぶどう畑へよく遊びに行った。
そこは繊維工場も同時に経営していたので、日頃の自分の生活環境とは違うその組み合わせに、非日常を感じたものです。
ぶどう畑の中に入って見上げれば、限りなく葡萄の天井が続きます。
その砂地の中にある作業小屋の前で、デラウェアを箱詰めするお婆さんの仕事を、ずっと興味深く見ていたものです。
昔は兄弟が多い家が多かったので、その高松の家にも沢山の親戚が集まって昼から宴会が始まります。
初めてビールの味を知ったのもこの宴会の席です。
大人達が面白がって飲ませるのです。
と言っても小学生ですから、舐めた程度。
でも、そのひと舐めの苦いビールの味を、今も覚えているんです。
それは現在も好んで飲んでいるキリンのクラシックラガーでした。
今まで何十年も生きていろいろな経験をしている中、何故かこのぶどう畑のある親戚でのシーンは、今でも鮮明に覚えているのです。
自宅のふすまを取り払って出来た大部屋での宴会、誰もいない繊維工場、そこで昼寝をしている猫、その自宅からぶどう園へ行く為に渡る国道の風や日差し。
全てが昨日の事のように頭に浮かびます。
今は訳あって、もうこのぶどう園も繊維工場もありません。
どこに引っ越されたのかも分からない。
コロナの影響で里帰りも出来ない長男や、気軽に旅行も出来ないこの状況の中、ゆっくり時間が流れていた良き時代のことを、今年も思い出しています。



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