一つの命は尊い
両親の遺品整理をしていたカミさんが持って来た幾つかの書類の中に、母子手帳がありました。
燻んでシミのある、その古い時代を感じるデザインの表紙をめくると、両親の名前に挟まれる形で、自分の名前が書かれています。
出生日、その時間、体重、その他が書かれた手帳。
普段何気なく、ただ機械的に書いている自分の生年月日。
今まで何百回、何千回と書いて来たその無機質な数字が、この年この日から始まったんだと考えると、今までカケラも思わなかった「特別な日」なんだと言う熱い感情が心の底から湧いて来ます。
それと同時に、両親の愛情が目に見える形で伝わって来る。
自分も親となり、その子供達も皆成人してしまった今だからこそ、そんな感情がより伝わるのかも知れません。
この手帳を初めて手にし、初めて書き込まれた我が子の名前と生年月日。
その時の母の幸せそうな顔が想像できます。
母子手帳。
それは自分の存在の意義を自覚し、一つ一つのこの世に生まれる命の尊さを再認識させてくれるもの。

